7days, seventhday

◇1

もう会えないと思っていたから
7日間は本当に長く感じられた。


いやいっそ、時間が止まってしまったのではないかとさえ思われた。

それはあの大晦日の日、最後にアキラにあった日から。

「もう会わない」と言ったアキラ。
傘を返す、とは言ったものの、その傘を返されてしまったら
もう永久にアキラに会う可能性がないままになるかもしれない、という
恐ろしい予感が行動を止めた。

もう二度と、一人の人間に会えないだけなのに。
たった一人の人間に会えないだけなのに。
それだけのことがこんなに辛いとは。わかっていたとはいえ、情けなかった。



それでも持ち前の忍耐力で何とか7日目を向かえ。
そろそろ自制心も限界だとは分かっていたけれど、だからといって
いつかのようにアキラの顔を見る為に出来ることなどなく、
少しでも気を紛らわす為に

「壱成、買い物に行こう。何か買うものはあるか?」
「いいの?吉兄。このリストのなんだけど、お店ちょっと遠いから・・・」
「構わない」


勤めて平常どおりに(無論成功などしていなかったが)家を出た。




それが、なぜこんなことになっているのか、伊沢にはさっぱりわからなかった。



目の前に、アキラがいる。


いや、厳密に言えば目の前ではない。
アキラがいるのはディスプレイの並ぶ街角の次の門を曲がったすぐのところで、
その姿が向かい側のディスプレイに映っているのを俺が見ているのだ。

そんな解釈はどうでもいい。
つまり、7日ぶりに今、アキラの横顔を見ている。

思わずその顔を凝視してしまう。
映っているのはアキラの左半分。
いくら見えないとはいえ気配で気づかれてしまうかとも思ったけれど、
アキラは気づかなかった。


上品な程度に明るい、可愛らしい服装。
ロングのスカートも綺麗なシルエットを見せていて長身によく似合っている。


目が離せない。
「もう会わない」と、アキラが言ったから、ここで会うことは出来ない。
だからこれ以上進むことは無論できない。
けれど、7日ぶりに見るアキラの姿から目を離して、
アキラという存在からこれ以上一歩でも遠ざかることは到底不可能だった。



自分でもコントロールできない葛藤の中、
伊沢はただその場に立ちつくす。

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