◇2
アキラにはアキラの事情があった。
アキラにとって伊沢が「信頼のおける男友達」でなくなってしまって以来、
アキラだってずっと考えてきていた。
今はもう変化したかつての高村への想いとも、遊佐への想いとも違う
伊沢への想い。
それが例えどんなものであれ、伊沢はこんな自分を好きでいていいような人間じゃ
ないからと、もう会わないと言ったのだけれど。
伊沢に会えないと寂しい。
伊沢に会えないと不安になる。
側にいて欲しい。
……胸が苦しい。
伊沢が側にいなくなって、頭がおかしくなるほど考えて。
この気持ちにどんな名前をつければいいのか、
実はまだわからない。
けれど確実にわかっているのは、
伊沢が側にいないと苦しいということ。
もしこのまま伊沢に会えなかったら?
そう考えると、この状況を望んだのは自分だったはずなのに
とても恐ろしい気持ちがしてたまらない。
まだわからないけれど。
わからないのだけれど。
伊沢は、こんな自分の自分勝手な願いを聞いてくれるだろうか。
……今更、遅いのではないかと自分でも思う。
けれどもう二度と会えないよりは。
ほんのわずかな可能性でも試すだけ試して、当たって砕けるほうがずっといい。
アキラは携帯に手をのばした。
伊沢に電話をかけるために。
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